Wienners 4th Album "TEN" ALL TRACKS SELF REVIEW

M1「TEN」

 

玉屋2060%:ほぼインストです。無駄に壮大ですよね(笑)。でも、ド頭のオンコードで上がっていくところとか、何年か前ならああいう風に作れなかったと思うんですね。《Dive in new world of music》。それを言いたくて作った曲というか、それを端的に表してますね。俺自身、中二病的な曲だと思ってます。中学生が思い描く“勇者”です(笑)。

 

∴560∵: 声も入ってるんですけど、ギター、ベース、キーボード、ドラムと対等に並んでいる。そういう作りですね。こういうタイプだとベースもいっぱい歌いたくなっちゃうんですけど、自分が果たすべき役割と自己主張とのバランスを取りつつ…というアプローチでできたかなって思います。

 

KOZO:イントロのドコドコした感じと、ビートがまっすぐ行く感じ、その両方で壮大感をイメージしています。抜けて行ってまた静まって行く感じを出したかったんです。

 

アサミサエ:ホント大袈裟な曲です(笑)。でも、“これから始まるぜ!”みたいな、ワクワクする高揚感もありますね。中二病的な感じもあるし(笑)。

 

 

 

M2「DEAR MY OCEAN」

 

玉屋2060%:一番アンサンブルが複雑な曲なんじゃないかな。聴いた感じはシンプルな歌ものという印象を持たれる方が多いとは思うんですけど、演奏的にはこれが一番入り組んでます。出したかったのは“海原”感。海のでかさ、とてつもない生命力、母性をバンドサウンドで表現している感じですね。歌と歌詞をギターのコードで説明していて、《不安定な時の早さに 揺れて揺られてどこまで行くの》のところではちょっと不安な気持ちを断片的に歌ってるんですけど、その不安定さとか儚さみたいなものをギリギリな感じで成り立っているビートで色付けをしているという。あと、僕は昔からアルバム全体で1曲みたいな感じがするものが好きなので、アルバムを作りながら、M1「TEN」が終わってすぐにM2「DEAR MY OCEAN」に入ることは考えてて、ここは(ひとつの楽曲で言うところの)ブレイクみたいなものかもしれないですね。

 

∴560∵: Aメロは細かく、Bメロは流れるように…という楽曲の成り立ちは大まかに玉屋の中にあったので、“こういう風にしたい”という型がある上で“どうするとそれが一番表現できるんだろう?”という正解を探す作業でしたね。頭の中にあるものをPCに打ち込んでデータとして形にするのと、人間が楽器を鳴らすバンドでは、いろんな面で変わってくるから、“何が一番いいところか?”を探すのに時間をかけた印象があります。でも、逆に言えば、それはこれまでやってきた中で自分のやれることが増えた証明でもあると思うし、そういう意味ではこれまでのどのアルバムよりも上手くできていると思います。

 

KOZO:ドラムスはいろんなパターンが出て来るんですよね。しかも細かい(笑)。でも、それによって音としていい効果が出ればいいなとすごく思っていて。これはこの曲に限ったことでもないんですけど、ここのビートが…”とか“このフィルが…”というよりは、“この場面でこういう音が入っていたらいいな”ということを再現できたらと思ってやっていたので、いろんなことをやっているんですけど、曲にとっては必然的なことをやっていると思います。

 

アサミサエ:この曲に限らず、イメージを共有するために(玉屋が)いろんな画像や動画を送ってくれるんですけど、それを見ていない人たちでも、曲を聴いた時に同じ景色が見えたらいいなって思いながらフレーズを作ってて。シンセソロは“粋なおっさんの船捌き”みたいな感じ(笑)──元気いっぱいのおっさんが船に乗せて連れて行ってくれるような感じにしたくて(笑)。歌は(各パートが)幾何学的に折り混ざっている音楽の中でエモーショナルに…というか、感情的にはみ出していけたらおもしろいんじゃないかとずっと思っていて、それが自分のやりたいことでもあるので、そこを大事にしてます。この曲ではそれが主にDメロに表れていて、それまで晴れた大海原で大航海してたのが夜になって孤独を感じる──そんなシーンを思って歌いました。

 

 

 

M3「恋のバングラビート」

 

玉屋2060%:この曲のテーマは“インド映画=ボリウッドのテーマソングをWiennersが作ったら…?”で、架空のボリウッド『恋のバングラビート』のテーマソングとして作ったんです。で、その“ボリウッドの音楽を日本人がダンスミュージックやロックにしたらこうなる”みたいな発想こそが日本人的だと思っていて。インド音楽をそのままやっている人たちとか、DJでかけている人たちはいっぱいいると思うんですけど、あれをそれ以上に進化させようというか、あの一歩先をやろうと。それがすごく重要だと思ってるんですよ。

着想からデモを作り始めるまで1年間くらいかかってます。というのも、まずインドのスケールを勉強してなくちゃいけないと思って、“インドっぽく聴こえる歌いまわしってどんな感じだろう?”ってインドの音楽を何十曲もコピーして、MIDI譜に写して徹底的に分析して、どういう動きにインドっぽさを感じるのかを考えて、それでできあがった曲です。本当にインド人にならないと伝わらないなと思ったんです。

電子音も入ってるし、新しいハイブリッドなワールドミュージックにしたかったんですね。AメロとBメロは完全なるインドスケールでメロディーを作っていて、サビになるとそれを破ってインドスケールと日本のヨナ抜き音階を合体させた、俺が勝手に作ったスケールの中で(メロディーを)動かしているんです。だから、サビはちょっと歌謡曲っぽいし、キャッチーに聴こえるんですよ。

ふざけているように聴こえるかもしれないんですけど、熱量はあると自負しているし、今回のアルバムの中で一番真面目に作った曲かもしれないです。

 

∴560∵:リズム隊は地盤を固める役割に徹している感じですかね。グイグイな曲調で、パーティー感というか、派手さがあるんですけど、4つ打ちがずっと続いて、ドラムスのキックとベースはそれをずっとキープするポジションにいる曲です。サビのメロディーは日本人向けな感じですよね。

 

KOZO:やっていることは派手なんですけど、僕はちょっと引いてるんです。聴いている人が無意識で乗れるような状態を作りたくて、ドラムスは一歩下がったところに常に居て、他の3人の歌や演奏がフィーチャーされることを意識してますね。

 

アサミサエ:“歌はこういう感じで…”という参考音源をもらって、その感じをどうやって出そうかなって思ったんですけども、私の歌もどっしりしているというか、(インド人に)成り切ってますよね(笑)。

 

 

 

M4「RAISE A RIOT」

 

玉屋2060%:仮タイトルは“中東ハードコア”。M3「恋のバングラビート」と同じ時期に作ったんですけど、ワールドミュージックが頭にあったところで、“中東の奴らがハードコアをやったら…?”みたいな感じで、全部、中東音階=アラビックスケールに従って作りました。これもM3からものすごく上手く繋がったと思います。

頭の《RAISE A RIOT》のところは4人でシンガロングしているんですけど、お客さんはあのリズムで一緒に言えますかね? 俺は当たり前のようにお客さんが細かいところまで一緒に歌ってくれるイメージで作ってたんですけど、もしかするとお客さんは着いて来れないかもしれない(苦笑)。

 

∴560∵:短い曲ですけど濃い。詰まってますね。複雑なんですよ。頭の入りからイントロ……いろんなパートがあるんで、すごい凝縮されていますね。ハードコアのテンションを持った曲ではあるんですけど、真っ直ぐじゃなくて、結構抑揚のあるアレンジになっているから、ボリューム感はすごいですよね。だから、やる方も体力的にすごいです(苦笑)。

 

KOZO:これは本当に肉体的にしんどかったです(苦笑)。でも、シレッとやったらこの感じは全然出なくて、パワー感を出してやらないといけないし、それにしては速いし(苦笑)、そういう葛藤はありましたね。

 

アサミサエ:(歌詞で)《異常なし》って言ってるけど、絶対に異常あるな…みたいな(笑)。でも、歌の軍隊感は、ライブで皆と楽しめると思います。

 

 

 

M5「おおるないとじゃっぷせっしょん」

 

玉屋2060%:ミニアルバム『GOKOH』(2016年)にも収録してますけど、「おおるないとじゃっぷせっしょん」はリリース前からライブでやっていて、初披露の時にもお客さんがちゃんと着いてきてくれてたんですね。それってそれまでのWiennersにはなかったことで。今はライブでの定番曲になってきていて、ステップアップもしているので、ここでもう一度、陽の目を浴びるチャンスを与えたいなということです。

 

∴560∵:アルバムに入れたのはシンプルな理由で、“すげぇいい曲だから”という自負ですね。初めてライブで演奏した時のお客さんの反応がすごくよくて、いつもライブでやってて改めて大事にしたいと思う曲ではあるんです。改めて皆にも聴いてほしいということでフルアルバムにも入れたという感じでしたね。

 

KOZO:アルバムに入ったことで、アルバム自体の色味も変わったなと思うこともあって、結果的にすごくよかったと思ってます。新しく聴いた人もライブで楽しめたらいいですね。

 

アサミサエ:皆で相談してもう一度収録することを決めたんですけど、アルバムの中でのハマリもすごくよくて。PVにもなっていて、ライブでも盛り上がる曲なので、聴いてもらえる機会が増えた方がいいし、上手いところに入ってくれたなという感じです(笑)。

 

 

 

M6「DANCE HALL CRUSHERS」

 

玉屋2060%:これもM5「おおるないとじゃっぷせっしょん」からの繋がりをすごく考えました。ミドルテンポでぶっ殺しにかかるという(笑)。20代の頃はBPMでしか殴れなかったんですけど、バンドも10年間やってきてこのくらいの年齢になると、ミドルテンポでぶっ殺しにかかることもできるんですよ。

メロディーは王道ですね。サビは特に分かりやすい。フロアに俺らが寄る曲というか、ライブで皆がちゃんと乗れて、しかもこっち側のエゴも出てる。“今までやってないことをやろう”という意識もあって、Bメロとサビにシンガロングパートがあざとく入ってます。俺はそういうのが下品だと思っていてこれまでやってこなかったんですけど、あえて挑戦しています。“自分だったらこうするぜ!”って。その意味でも新しくはあります。

 

∴560∵:“こういう曲を作ろうよ”というイメージは(以前から玉屋2060%に)投げていたんですよ。だから、この曲が上がってきた時にすごく興奮したのを覚えてます。“これだよ!”って(笑)。いい意味で、僕のイメージにはない、玉屋が持っているものが合わさっていて、やりながらそれが分かっていって……すごく好きです(笑)。全編スラップの曲なんで、単純にやっていて楽しいですね。そういう意味でもアガりますよね。ただ、ミドルと言うほどミドルではないです(笑)。あくまでもWienners的な見解のミドルです(笑)。

 

KOZO:音を選びたいと思ったし、ディスコ、ファンクですから、色気をすごく出したかったんですね。4つ打ちで、ハイハットやシンバルは一定に鳴っているだけなんですけど、(だからこそ)色気のある音で残すことにこだわって、“この曲はこういうイメージがあるからそこを強く出してほしい”ってミックス作業をしている玉屋にも伝えました。そのこだわりを含めて、自分にとってはすごく楽しい曲です。

 

アサミサエ:ダンサブルな曲で、サビの《yeah yeah yeah》は、“ここで盛り上がれなかったら何で盛り上がるだろう?”って感じですね。私も初めてラップをやっていますし、Aメロには♪オーエーオーエー♪みたいな掛け声が入っていて普通ではない感じがあって、いろんなものが盛り込まれています。“Wiennersはこういうこともやるんですね!?”と思ってもらえたらいいですね。

 

 

 

M7「極楽浄土のあなたへ」

 

玉屋2060%:Wiennersにはフォーキーな曲とそうでない曲がありますけど、これはフォーキーな曲です。歌ものですね。言いたいこと、伝えたいことがものすごくあったんで、弾き語りで歌詞とメロディーを一緒に作っていきました。

作ったのは2年前くらいなんですけど、身近な人が立て続けにいなくなってしまった時期で。“自分がよかれと思ってやっていたことは、果たしてその人にとって幸せなことだったんだろうか?”とか、“俺は気持ちを込めていたけれども、それがどれだけ伝わっていたのか? それは正解だったのか?”って、後悔とは少し違うんですけど、そんなことを心の中で思ってて、供養ということではないですけど、それを言葉にしておきたいと思ったんです。もういなくなった人ですから、この曲は聴けないんですけどね。

 間奏は“走馬灯”感。歌詞で言いたいことは言ってるんですけど──これは自分の中のテーマでもありますけど、本当に言いたいことって言葉にならないじゃないですか? だから、間奏のああいう発想が本当に言いたいことというか、“うぉーっ!”という感じは言葉が乗ってない方が伝わるんじゃないかなって思ったんです。

歌も、当事者としてめちゃめちゃエモーショナルに歌うんじゃなくて、この物語を読み聞かせる人になって歌いたいと。自分自身が経験した話なんですけど、経験したこととして話すというよりは、そういう物語を読んでいる気持ちで、ライブではある程度の距離を置いて歌いたいです。その方がグッとくるというか。泣きながら歌われても俺自身は“お、おう…”としか言えないと思うんだけど(笑)、“こういうお話があったんだよ”くらいで言われたら、俺は泣いちゃうんで。自分自身で感情を込めて歌うには重過ぎると思っていて、そうではなく、サラッと歌いたいという気持ちですね。

 

∴560∵:大袈裟なシンセフレーズはないし、イントロもアウトロもないんですよね。楽器での表現は間奏だけ。それ以外は全部、歌が主軸になっていて、歌詞で伝えたい部分に一番重きを置いている曲です。フォークを聴いてきた人には懐かしさの中に新しさを感じてもらえると思うんですけど、僕らよりも若い世代にはどんな風に感じてもらえるのか楽しみではありますよね。

 

KOZO:間奏はパッと聴き、ドラムソロなのか、キーボードソロなのか分からないんですけど、僕の中であそこは(この曲の)情景描写的な醍醐味だと思っていて。玉屋が言う“走馬灯”感が一番大事だと思っていたんで、それを表現するための演奏であることを忘れずにやって。キラッとサラッとした感じになったんですけど、(メンバー)皆でそうやったことがあそこに集約されていて、その集約されている感じがとてもよかったです。

 

アサミサエ:タイトルが個性的なんですけど、誰でもこういう経験はするだろうから、歌詞に共感できる人も多いと思います。この曲は全員でガンと演奏したというよりは、メンバーは黒子になっている感じというか、曲が前に出て、意味をちゃんと伝えるような音楽になっているので、ライブでもそういう感じ──“祈り”という感じでやれたら…と思います。

 

 

 

M8「マイノリティ」

 

玉屋2060%:サビの《ずっと君が好きでした》という歌詞とメロディーから作ったんですけど、これもずっと歌いたかったテーマで。主人公はちょっと趣味趣向が変わった人で──世の中の人は皆そうだと思うんですけど、簡単に言ったら“変態”で、その人が人を好きになった歌なんです。人に言えないこと、願望や妄想って皆の頭の中にあると思うんですよ。俺もあるし。それを口に出さない人がほとんどだと思うんですけど、そういった感情を他人と話せたら何て楽しいんだろうなと思うんです。人の趣味趣向ってホントそれぞれで、これからの世の中はもっともっと細分化されていくと思うんですけど、それって本来あるべき姿だと思うし。でも、そういうことを言えない人もいるんだってことを言いたかったし、分かってもらいたかったという。

基本的に僕は言いたいことがあって音楽をやっているんではなくて、音楽をやりたくて音楽をやってるタイプなんで、極論すると歌のタイプは何でもいいんです。情景を描きたいというだけで。だけど、生きているとたまに伝えたいことも出てくるんで、そうなってくると、自分は音楽をやっているので、“あ、伝える方法がここにあるわ”っていう感じで曲にしたという。たまーにそういう曲ができるんですよね。

この歌詞は俺が高校の時に好きだった子のことを書いたんですけど、“ずっと君が好きでした”という言葉を出すのにめちゃめちゃ勇気が要ったんですよ。すげぇ考えて。何でか分からないんですけど、(バンドに)持っていこうかどうかも超悩んだんです。でも、これは本心だし、自分で歌いたいことだし、“やろう!”って決めたんです。バーッと言葉が出て来て、1日で書きあげました。20代だったら書けなかったと思います。まだまだ浅いですけど、いろんなことを経験したこの年齢になって、ストレートなことも歌えるようになったんだなと思います。自分の中では大きい曲ですね。

アレンジに関しては無駄なことは一切やっていない、青春パンクです。変に色気付きたくなかったというか、イメージとしては高校生が作るアレンジです。この曲で細かいことをやると、“何を細かいことをやってるんだ!?”となっちゃって、逆に伝わらないなと。ブレイクしてオクターブ(奏法)でギターソロとか、落ちサビでの白タマとか、あんな定番は今まで絶対にやらなかったんですけど(笑)、こういう曲だからこそやりました。

 

∴560∵:玉屋からこれがどういう曲か聞いて、“分かるなぁ”って共感できる面が多々あって、共有できないことの辛さ、むず痒さと、それを共有できた時、仲間を見つけられた時の楽しさもすごい分かるんですよ。その楽しさって他に例えられないような、“清々しい気持ちよさがあるよなぁ”とか、いろんな感覚を持ちましたね。

青春パンクは自分の育ちの中にあって、内側で混ざっていると思うし、自分としてもストレートに、感情の赴くままにやろうと、頭で考えて表現しないように、感覚と感情、気持ちから出て来るものでやりました。サウンドには自分が10代の頃に聴いて感化されたものが滲んでいて、無条件に熱くなるものになっていると思います。

 

KOZO:これは僕がWiennersに入る前から思っていたことなんですけど、玉屋がステージの真ん中に立ってMCで言っていることって結構勇気をもらえるんです。着いて行きたくなるというか、希望をもらえる。(玉屋は)この曲を勇気を出して提供したと思うんですけど、それをやってくれてよかったというか。“すげぇ気持ち分かるわ”というところがあるんで、こういうことを、声を大にして言ってくれるのは単純にうれしかったですよね。今までこういうタイプの楽曲はあんまりWiennersになかったんですけど、僕も青春時代にパンク、メロコアのツービートに踊らされてきたので、単純にそのよさを出そうと思ってやりましたね。

 

アサミサエ:これは何か(メンバーに)言うのが嫌で、今日まで言ってなかったんですけど、この曲をもらう前、スタジオへ行く電車の中で“マイノリティ”って言葉をYahoo!で調べてたんですよ。で、そのリハで(玉屋が)“新しい曲を持ってきたんだよ”って渡された譜面に“「マイノリティ」(仮)”って書いてあって、“うわっ!”と思って。何か気持ち悪くて、今まで言わなかったんですけど(苦笑)──。曲にならなかったら、かなりパーソナルな感情のままで終わっていたと思うんです。でも、こうして歌われると、それを肯定してもらえるというか。だから、これを聴いた人にも“自分はこれでいいんだ!”って思ってもらえたらいいなって。そういう風に背中を押す曲でもあると思うんで、逆に大衆性がある曲だと思います。口に出さないだけで誰にでもある感情だと思うので、個々の能力をもっと出せる曲でもあると思いますね。

 

 

M9「stimulation guerrilla」

 

玉屋2060%:これも∴560∵から“こんな曲があるといいんじゃない?”って言われて作った曲で、デジタルハードコアみたいな感じですかね。テンションは1stアルバムみたいなんですけど、自分の中ではちゃんと技を使っています。歌詞に《コンディミに乗って》って出てくるんですけど、コンビネーション・ディミニッシュというスケールひとつだけでやっていて。LOCUSTみたいな気持ち悪さがあるんですけど、自分の中ではめちゃめちゃリフがキャッチーで、ド頭のリフが思い浮かんだ時点で“来たな!”と思ったくらいで、リフ推しの曲ですね。1stの頃はリフが浮かんだとしても、それを主役にできなくて、いろんなことをやってそれが埋もれちゃう感じだったんですけど、この曲ではリフをちゃんと主役にできてますね。

 

∴560∵:これは終盤にできた曲なんですけど、アルバムに入れる曲がいろいろと並んできた段階で、アルバムの全体像が最初に思い描いていた感じとはちょっと変わってきてたんです。で、この先、他にどういう曲をアルバムに入れようかと話し合いになった時に──僕、カオティックハードコアとか好きなんですけど、アメリカにLOCUSTという変態ハードコアバンドがいて、それがすごく気持ち悪いんですよ。ショートチューンで複雑で、でも爆裂テンション高いみたいなバンドなんですけど、“LOCUSTみたいな曲がやりたい”って僕が言いました(笑)。“ライブでやりたい”“こういう曲があるといいな”と。

 

KOZO:僕はLOCUSTってあんまり聴いたことはなかったんですけど、その話を聞いてから結構聴いて、ライブの動画もネットに上がっていたのでそれも見たんです。ゴチャッとしてワーッとしてるんですけど、すごく上手かったんですよね。で、これは全曲に言えることなんですけど、“こういうことをやるからにはもっと上手くなりたい”とすごい思った瞬間だったんです。(そうじゃないと)よさが伝わらない。上手くなってやんなきゃなって思いましたね。

 

アサミサエ:私、最初にこの曲を聴いた時、“自分の引き出しにこれはなーい!”って思って(笑)。それは「RAISE A RIOT」もそうなんですけど、でも、その感じがおもしろいことになればいいなって。このバンドに入らなかったら絶対にやれなかったことなんで、すごく楽しんでやりましたし、結果的には好きな曲になりましたね。早くライブでやりたいです。

 

 

 

M10「TRADITIONAL」

 

玉屋2060%:「TRADITIONAL」は最後の最後にでき上がった曲で、一聴すると1stアルバムみたいなテンションで、情報が多くて詰め込まれている感じなんですけど、自分の中ではそれとはまったく逆で、意外とシンプルな曲だと思ってるんですよ。シンプルだけど、“ここさえ複雑にしておけば…!”というところを狙ってやってて、結果的に(過去作と)同じくらいにテンションが高く聴こえるものができたかなと。無駄を省くことによって、本当に見せたい主役の部分が見えてくる──そういう曲が作れるようになってきたんだと思います。

ある意味で外国人が思い描く日本。“サムライ、ハラキリ”みたいな。でも、日本のことを歌っていながら、実は和音階は入っていないんです。いきなりミクスチャーっぽくなったりするんですけど、日本に来てすげぇ浮かれる外国人が、ハチマキ巻いて“ハルハアケボノ”って言ってるみたいな──ハリウッドザコシショウの物真似じゃないですけど(笑)、笑っちゃうくらいに誇張された日本感ですね。歌詞でちゃんとテンションを想像するとめちゃめちゃおもしろいと思います(笑)。歌詞とテンションがリンクしてない。ワビサビが全然ない奴が《春夏秋冬の風情》とか言っているという(笑)。

 

∴560∵:ハイパーテンション高いんで、スピード感を一番重視して…という感じでしたね。だから、いい意味でアレンジで凝ろうとしてない。ライブで映える曲だと思うし、きっとお客さんもめっちゃ楽しいでしょうから、それを想像して録りました。

 

KOZO:海外から見た日本感──そのワチャワチャした感じをドラムでも出せたらいいなと思っていましたね。展開が細かいんですけど、スルッと進むんじゃなくて、場面が変わった時に“このパートはこのパターン、次はこのパターン”って分かりやすくやっています。

 

アサミサエ:私はこの手の曲がめちゃめちゃ好きで。日本のことを歌ってるけど、“おもてなし”みたいな感じではなくて、“ニホンノココロ~!”みたいなテンションで(笑)──“絶対に風情を分かってないだろう!?”っていう(笑)。そういう感じを出したくて。登場人物もいっぱいで、そこはライブでは届かない部分かもしれないんですけど、いろんな人が出て来ていることは、ちゃんとCDで確認してほしいです。

 

 

 

M11「愛鳥賛歌」

 

玉屋2060%:歌詞と、アサミサエがこの曲でやりたかったことは聞いていて、それをどこまで表現できるかなって思いながらアレンジしたので、ふたつの癖が合わさることで、曲の個性はいい意味でボヤっとしています。でも、だから、それこそ鳥のような躍動感と浮遊感が出せたのかなと思いますね。原曲はピアノの弾き語りで、4拍子が途中から3拍子になっていたんですけど、そこにツービートを乗せたんです。拍の取り方がまったく変わってきて、前へ進んでるんだけど、フワフワとした、捉えどころのない感じになったかなと。

今回、アサミサエの曲は絶対に入れようとは思ってたんですよ。リレコーディングベストアルバム『BEST NEW RETAKES』も、その後のツアーもそのためのものであったし。これだけに終わることなく、またお願いしたいと思います。今回は何の枠組みもない中で作ったんですけど、今度は“こういう感じの曲を作って”って言ってみたいなと。そうなって行くことはバンドにとって大事なことだし、今回のアルバムでこれができたことで、またさらにやりたいことができるという感じもすごくあります。

 

∴560∵: サウンドは結構力強い、パンクロックの感じで行きたかったんで、その辺ではストレートでありつつ、僕としては、そこにドラマチックさを持たせたかったんですよね。ボーカルもずっとサエだから、そのバランスは大事だと思っていて。女性が歌っているからといって、儚くて感動的…だけにはしたくなくて、そこにロックの力強さ、男の熱苦しい演奏でガッと攻める──そのバランス感で、いいところを目指したいなと思ってアプローチしたんですよね。

 

KOZO:今までWiennersでやっていたものとはちょっとニュアンスが違っていたんで、それをどうやって表現しようかなってすごい考えた曲ですね。“どういう音にしようかな?”って結構試行錯誤して、この曲のためだけに新しいシンバルを買いました(笑)。どうしてもそのシンバルじゃないと僕が思っている音が出ない気がして。すごい新鮮な曲でしたね。

 

アサミサエ:私、このバンドであからさまな自己呈示をしたいとは思っていて(笑)、この曲で歌っている“誰しもが一度は鳥になってみたいと思うんじゃないかな?”という内容はまさにそれですね。あと、愛することを覚えたら人はもっと豊かになれるんじゃないかという思いが自分の中にはあるんですけど、このテーマをWiennersでやりたいという気持ちがあったんですよね。それ(=愛すること)はそんなに簡単にできることでもないとも思っていて──でも、勇気を持って向かって行く姿を書きたかったし、(それができなくて)孤独になっている人たちもいると思うんで、そういう呈示でもあって。“愛なんて…(要らない)”と思っている人もいるとは思うんですけど、“でも、いいんです! 私はこう思ってます!”みたいなものにしたかったし、苦しみの先には自由があると思うので、そういうことも伝わればいいなと思いますね。

私が聴いてほしいのは、玉屋さんがギターで《キラキラ揺れる 水面に浮かぶ》の歌詞をイメージしたフレーズを入れてくれたところで。最初にそれを聴いた時はすごくうれしくて。自分ひとりだったらこういうアレンジにはならなかったでしょうし、重たい曲になってないのはWiennersだからだと思います。ソロで曲を作ることと、Wiennersに曲を作るというのは全然勝手が違ったんですけど、思い入れのある曲になりましたね。

 

▶︎ 帆苅智之(取材・テキスト)

Wienners official web site