Wienners 4th Album "TEN" SPECIAL LINER NOTES

濃密、濃厚なジャパニーズ・ハイブリッドミュージックの誕生‼

 

 今年結成10周年の節目を迎えたWienners。しかし、ここまでの彼らの歩みは決して順風満帆なものではなかった。2013年にメジャーデビューを果たすも、翌年にメンバーが脱退。バンドは一度リセットを余儀なくされる。だが、その後、9カ月のインターバルを経て、アサミサエ(Vo/Key/Sampler)とKOZO(Dr)が加入し、2015年11月にシングル「みずいろときいろ」、2016年10月にミニアルバム『GOKOH』、そして昨年、2017年8月には、ライブでの定番曲を再レコーディングしたベストアルバム『BEST NEW RETAKES』と、毎年休むことなく作品を制作・発表。また、それに伴うライブツアーを行なうことで、着実に現メンバーでの音を固めてきた。4thアルバム『TEN』はそれが結実した形であり、一から真摯に修練を重ねてきたWiennersが辿り着いた天空の城である。

 

 「バンドとしては『BEST NEW RETAKES』を通ったことが大きいと思っていて。あのまま新曲、新曲って作っていったら(バンドサウンドを)固めるのは難しかったし、新しいものを作るのも難しかったと思うんですよ。言い方は悪いかもしれないんですけど、点線があるものをなぞったような感じというか、ありものをなぞる方法でもう一回新しくWiennersという枠組みを作って、その上で今回『TEN』を作ったんです。1stアルバムの頃のような短くて速くて激しくて…という曲がいっぱい出て来たんですけど、いろんなことを経てきたからこそ生まれた視点で作ったところはあって、テンションは1stアルバムと一緒なんですけど、アプローチはまったく違うんですよ。今まで培ってきた技や知識をフルに活かして、狙ってあの時のものを作ろう…みたいなところはすごくありましたね」(玉屋2060%)。

 

「一言で言っちゃうと原点回帰みたいなものはあったと思うんですね。曲の短さ。テンションの高さ。アッパーな感じ。ライブでバンドもフロアも熱くなってグシャッとなるような曲調で、Wiennersを始めた初期の気持ちを改めて意識するようなところはあったんですけど、そういう楽曲を作ろうというアプローチも、さまざまな経験を経た今だからできることで。それはいろんな点で思ったし、自分のパートにおいてもすごく大きかったと思うんです。あと、初期衝動的なものを取り戻しながら…ではあったんですけど、良くも悪くも、もう初期衝動ではないから、その良い部分だけをちゃんと落とし込めたかなという部分もあって」(∴560∵)。

 

4thアルバム『TEN』は、全11曲で収録時間は30分と少し。4分を超える楽曲はひとつもなく、その瑞々しいまでの躍動感からは1stアルバムを彷彿とさせる。しかし、単にタイムが短いというのではなく、それぞれに4人の音、バンドサウンドがギュッと凝縮されていて、1曲1曲が濃密、濃厚なのである。一巡したのか二巡したのか、はたまたステージが上がったか分からないが、バンドのレベルアップが確実に分かる内容だ。

 

「これは自分がWiennersに入ってからずっと感じていたことではあるんですけど、ドラムスの手数の多さにしても、そこに玉屋が見せたい世界観があることは分かっているので、今回のアルバムでは、それがどういう意味なのか、どういう感じで演奏したらいいのかということをすごく考えて。忙しいけど、耳障りじゃない感じにしたかったところはありましたね。あと、(ドラミングで)雰囲気を変えるのはいいんですけど、そこをやり過ぎるとリズム感が変わっちゃうところもあるので、なるべくわざとらしく演奏しないように…という意識もありましたね」(KOZO)。

 

「玉屋さんと“あえてやってこなかったことをやってみよう”みたいな話をしながら、細かいフレーズも相談しながら作って。自分がやったことがないことをどんどんやらせてもらえる環境ですし、歌に関して言えば、私はシャウトとかをやって来なかった人なんですけど(苦笑)、でも、そういう自分を壊していかないといけないということも積み重ねて。ライブでもどんどん自分を解放できるようになってきたというか、ワッとなれるところへ行ける自分が増えて来たなと思ってますし(笑)」(アサミサエ)。

 

再び得ることができた初期衝動と、それによる原点回帰は、必然的にWienners本来のフォルムを明確に映し出している。それは彼らが日本人であることであり、ズバリ、日本人のバンドならではのサウンドメイキングである。弾けるようなポップファンクチューンM10「TRADITIONAL」では《We are Japanese Great traditional》と豪語している。

 

「自分が日本人であることは自分自身にとって大きくて、誇りに思っています。日本人ってゼロから1を作り出す能力はそれほどないかもしれないんですけど、1を10にする力ってめちゃめちゃあって。海外から入ってきたものを日本独自のものに進化させる──それこそゲームもそうだし、アニメもそうで、日本のその力はすげぇぞと。で、音楽でもそれをやりたいんです。80年代の日本のポップスって(アメリカから)入って来たファンクとかブラックミュージックの影響を受けているんですけど、全然違うものになっているじゃないですか? どこか土臭いというか。その感じを僕はすごく誇りに思っていて、それは日本人にしかできないという風に思っているんで、今回もそれは大きなキーワードかなと思います」(玉屋2060%)。

 

日本独自のものに進化させる力。それは本作のほぼすべての楽曲で発揮されている。

複雑なバンドアンサンブルで大らかさの中に不安定さを同居させた、一筋縄ではいかないポップチューンM2「DEAR MY OCEAN」。

仮タイトルが“中東ハードコア”だったというM4「RAISE A RIOT」。

しっかりとシンガロングパートも入れ込んだ、歌って踊れるディスコチューンM6「DANCE HALL CRUSHERS」。

基本はフォーキーな歌ものだが、サウンドが密集する間奏で一生分のドラマを描いたM7「極楽浄土のあなたへ」。

キャッチーなギターリフが引っ張るデジタルカオティックハードコアM9「stimulation guerrilla」。

そして、メロディーに躍動感と浮遊感がある一方でサウンドは力強い、Wienners初のアサミサエ作詞作曲によるナンバーM11「愛鳥賛歌」。

いい意味で、所謂ストレートな楽曲はなく、どれもこれも既存のジャンルに縛られない、何かと何かを掛け合わせた交雑種=ハイブリッドな音楽である。

 

「このアルバムのテーマとしては、まだ見たことがない、誰も知らない国の地面を掘ってみたらレコードが出てきて、それを再生したら聴こえてきた音楽──そんなことを思っていたんです。誰も聴いたことがないけど、懐かしくて、“何か日本の音楽に似てるな”というイメージで作ってて。音楽でまったく新しいものって絶対に出て来ないじゃないですか? もう出尽くした。で、そこからどう解釈していくか? どういうアプローチをしていくか? どれとどれを混ぜ合わせるか? そういう作業だと思っていて、その発想をどれだけ出すかというね」(玉屋2060%)。

 

極めつけはM3「恋のバングラビート」であろう。文字通り、インド風のダンスミュージックである“バングラビート”に、どこか昭和歌謡であったり、大陸風であったりするメロディーを乗せている。アサミサエの無機質な歌い方も独特の雰囲気を醸し出しており、このバンドにしか思い浮かばない、まさにWiennersの面目躍如たるナンバーだ。

 

「この曲のテーマは“インド映画=ボリウッドのテーマソングをWiennersが作ったら…?”で、架空のボリウッド『恋のバングラビート』のテーマソングとして作ったんです。で、その“ボリウッドの音楽を日本人がダンスミュージックやロックにしたらこうなる”みたいな発想こそが日本人的だと思っていて。インド音楽をそのままやっている人たちとか、DJでかけている人たちはいっぱいいると思うんですけど、あれをそれ以上に進化させようというか、あの一歩先をやろうと。それがすごく重要だと思ってるんですよ。

着想からデモを作り始めるまで1年間くらいかかってます。というのも、まずインドのスケールを勉強してなくちゃいけないと思って、“インドっぽく聴こえる歌いまわしってどんな感じだろう?”ってインドの音楽を何十曲もコピーして、MIDI譜に写して徹底的に分析して、どういう動きにインドっぽさを感じるのかを考えて、それでできあがった曲です。本当にインド人にならないと伝わらないなと思ったんです。

ふざけているように聴こえるかもしれないんですけど、熱量はあると自負しているし、今回のアルバムの中で一番真面目に作った曲かもしれないです」(玉屋2060%)。

 

 さて、今回、4thアルバム『TEN』で示したWiennersならではのハイブリッドミュージックは実にお見事で、そこだけでも十分に拍手喝采ものなのだが、それだけに止まらないところに彼らのすごさ、素晴らしさがある。M8「マイノリティ」にそれを見る。

 

「これもずっと歌いたかったテーマで。主人公はちょっと趣味趣向が変わった人で──世の中の人は皆そうだと思うんですけど、簡単に言ったら“変態”で、その人が人を好きになった歌なんですけど、人に言えないこと、願望や妄想って皆の頭の中にあると思うんですよ。俺もあるし。それを口に出さない人がほとんどだと思うんですけど、そういった感情を他人と話せたら何て楽しいんだろうなと思うんです。人の趣味趣向ってホントそれぞれで、これからの世の中はもっともっと細分化されていくと思うんですけど、それって本来あるべき姿だと思うし。でも、そういうことを言えない人もいるんだってことを言いたかったし、分かってもらいたかったという。

基本的に僕は言いたいことがあって音楽をやっているんではなくて、音楽をやりたくて音楽をやってるタイプなんで、極論すると歌のタイプは何でもいいんです。情景を描きたいというだけで。だけど、生きているとたまに伝えたいことも出てくるんで、そうなってくると、自分は音楽をやっているので、“あ、伝える方法がここにあるわ”っていう感じで曲にしたという。たまーにそういう曲ができるんですよね」(玉屋2060%)。

 

《人にはみんな個性があって それぞれの人生を生きてる/自分に生まれてよかったと 思えることができたら/好きなものを好きって言えたらどんなに 素晴らしいだろう》。

ここで歌われているのは悲恋の物語ではあるものの、根底に流れる思想は、LGBTへの差別であったり、在日外国人への民族差別といったリアルタイムな社会問題にも直結する。無論、玉屋はそれを直接的に叫んではいるわけではないので、その辺は誤解のないようにお願いしたいのが、無自覚、無意識に自ら作品で何かを予見することは、ロックミュージシャンに限らず、古今東西、優れたアーティストが持ち得るものだ。

 

「玉屋からこれがどういう曲か聞いて、“分かるなぁ”って共感できる面が多々あって、共有できないことの辛さ、むず痒さと、それを共有できた時、仲間を見つけられた時の楽しさもすごい分かるんですよ。その楽しさって他に例えられないような、“清々しい気持ちよさがあるよなぁ”とか、いろんな感覚を持ちましたね」(∴560∵)。

 

「玉屋がステージの真ん中に立ってMCで言っていることって結構勇気をもらえるんです。着いて行きたくなるというか、希望をもらえる。(玉屋は)この曲を勇気を出して提供したと思うんですけど、それをやってくれてよかったというか。“すげぇ気持ち分かるわ”というところがあるんで、こういうことを、声を大にして言ってくれるのは単純にうれしかったですよね」(KOZO)。

 

「これを聴いた人にも“自分はこれでいいんだ!”って思ってもらえたらいいなって。そういう風に背中を押す曲でもあると思うんで、逆に大衆性がある曲だと思います。口に出さないだけで誰にでもある感情だと思うので、個々の能力をもっと出せる曲でもあると思いますね」(アサミサエ)。

 

そうした玉屋のアティチュードに他のメンバーが共感し、意識を共有していることも見逃せない。即ち、バンドが一丸となっている証左でもある。4thアルバム『TEN』はそのサウンド、テーマ、スピリット、そのすべてにおいて、今のWiennersが充実し切っていることを示す作品である。10年目にして彼らの最高傑作が生まれたと断言することに何ら躊躇はない。

 

▶︎ 帆苅智之(取材・テキスト)

Wienners official web site